松戸市立病院建替え問題 急浮上・急展開の千駄堀移転計画について識者に聞く
前松戸市長 川井敏久

前松戸市長 川井敏久

耐震性の問題などにより、早期の建替えが必要な松戸市立病院。約2年前、本郷谷市長は64億円での現地建替えを主たる選挙公約に掲げ、初当選を果たしました。しかしこの公約を破棄し、突如として千駄堀案が示され、急展開を見せています。本紙では、市民の間でも賛否が分かれる本計画の是非を、様々な角度で考えていきます。今回は、病院移転政策を進めてきた前市長の川井敏久氏に聞きました。

患者に危険を与え、環境を破壊する計画に疑問

— 川井さんの進めていた東松戸移転計画の対抗案として、前回の選挙で本郷谷氏が唱えた現地建替え計画の公約が、破棄されました。
川井  私はかねてより、現地建替えは不可能だということを明確に申し上げてきました。64億円という予算も非現実的であり、全く実現不可能な計画を対案として示されたことは、集票以外のなにものでもないと受け止めておりました。
— その後、市が示した千駄堀移転案についての印象は?
川井  千駄堀案は、私が市長在任時にも移転候補地のひとつとして検討しました。しかし、多くの課題があり、私は市民の命を守る病院には適さないと判断しました。しかし今の計画は、課題を解決せずに乱暴に進められてしまっており、市の文化度、市民の民度が問われています。
— その課題とは?
川井  まず、病院の敷地を分断するように高圧線が通っています。電磁波が患者、特に小さな子どもの身体に与える悪影響や、鉄塔がヘリポートを危険にさらす点などは無視できない問題です。次に、計画地には文化財である大六天遺跡がある点です。守り、引き継ぐべき貴重な史跡を、行政が率先して破壊する。さらには、緑地としても貴重な都市農地を減少させ、駐車場のために樹林を伐採してしまう。危険性を高め、自然や文化を破壊する現在の移転計画には、疑問を抱かざるを得ません。

市民を欺(あざむ)く行政手法、被害者は松戸市民

— その他には?
川井  借地ありきの用地確保です。このことは、末代まで多額の借地料を払い続ける事を意味します。市財政を圧迫するばかりではなく、税金のムダ使いにもなりかねません。当初の事業費を低く見せるための借地方式なのでしょう。しかし契約が結ばれると、病院建設は何年のびようと、いくらかかろうと進める事になります。借地による病院建設は、将来に禍根を残すと言わざるを得ません。
— 本郷谷市長は、先日の議会で公約破棄を謝罪しました。
川井  承知しています。しかしあの発言は、とても市民にウソをついた事の謝罪とは受け取れず、むしろ責任逃れの言い訳としか聞こえませんでした。結局は言いっ放しで責任を取らないという姿は、国の民主党政権と全く同じです。これでは市民が安心し、納得できる病院建設はできないと思います。
— ただ、ベストな移転案を考えるにも、市民には計画の中身が知らされていません。
川井  病院の移転をめぐって、市民に情報が提供されていないことは、大きな問題です。今の松戸市政は、公約の破棄や計画変更、そして予算面などにおいて、正しい情報を示さず、市民の目をスリ抜けようとしているかに見えます。その結果、不透明な病院移転計画によって犠牲を強いられるのは、ほかでもなく松戸市民です。いったい何のため、誰のための病院建設なのか、私は強い危機感を抱いています。

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